京論壇2017公式ブログ

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東京セッション報告②

ジェンダー分科会の大島です。
10月8日の最終報告会にお越し頂きました皆様、ありがとうございました。ここでは、その最終報告会に至るまでの一週間、東京セッションでジェンダー分科会がどのように活動してきたかついて報告します。

ジェンダー分科会では、教育、キャリア、家族の3つのケースを扱いました。9月に行われた北京セッションでは、教育とキャリアの一部まで話をしたので、東京セッションではキャリアにまつわるジェンダーの話の続きから入りました。
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東京セッションの初めでは、女性の昇進を妨げるガラスの天井がなぜ生まれているのか、日本におけるM字カーブの問題、中国における一人っ子政策から二人っ子政策への転換などについて議論しながら、フィールドワークへ備えました。

今回、フィールドワークでは、外資系企業であるPwC様、日本企業でありながら先進的な取り組みをされているSMBC様を訪問してお話を伺わせて頂きました。

 PwC様では、UN Womenの推進する、女性のエンパワーメントのためのHeForSheプロジェクトへの社内での取り組みについて紹介して頂きました。PwC様ではプロジェクト推進のためのキャンペーンを行い、さらには毎年部門ごとに女性の働き方に関する取り組みを競い合うイベントを開催されているというお話を伺いました。お話の中での「小さな一つのアクションの積み重ねが環境を大きく変えていく。自分の身の回りの小さなことからで良いから取り組み始めるのが大事だ。」という言葉が非常に印象に残りました。その他にも、女性社員の方々が仕事と家族のバランスによりどのように苦労しているかについて実際のアンケート・インタビューを基にしたお話、外国のオフィスと比較した上で日本ではどのような働き方の特徴・文化があるかについてのお話など、この後の議論をする上で助けとなるお話を沢山して頂きました。

 SMBC様では2種類の職種、総合職とビジネスキャリア職の違いとその実情について中心にお話を伺いました。総合職と一般職の違いについては北京セッションで扱って議論していたため、北京大生もこの話題には興味津々でした。コンテンツを作る総合職、サポート役としてなくてはならない存在であるビジネスキャリア職、2つの職種の忙しさの違い、なぜその職種を選んだのかなどを実体験に基づいて話して頂き、働き方に関して想像の上でしか語ることのできなかった僕らにとって非常に勉強になる良い機会となりました。
また、僕らはシステムの整備不足が女性の働き方に関する問題の中心ではないかと考えていましたが、お話を伺う中で必ずしもそれは正しくないということが分かりました。ただシステムや制度を整備するだけではなく、次の段階として、その制度が使われる環境や周りの意識を変えないと上手く機能しないというお話はその後の議論で問題の解決策を考えていく際の良いヒントとなりました。

今回扱った3つのケース、教育、キャリア、家族の中でもキャリアに関しては学生という立場では実体験に基づいて話すことが難しい部分がありました。今回、PwC様とSMBC様を訪問させて頂き、実際に社会人として働いていらっしゃる方々に直接お話を伺えましたのは、現状を理解し、議論を深める上で大きな助けとなりました。お忙しい中ご協力頂き、本当にありがとうございました。



キャリアについての議論の後には、3つのうち最後のケース、家族について扱いました。その中でも日中で大きく違いが見られて興味深かったトピック、祖父母世代と両親、子供との関係について紹介します。

 日本においては、核家族化が進み三世代が同居する家庭の割合は減ってきています。特に、都心部ではかなり稀であるように思われます。これには、様々な理由が考えられます。親から独立して生活したいという考えをもつ夫婦が多いのではないか、祖父母世代が自分たちが長い年月を過ごした愛着のある土地から離れたくないのではないか、いわゆる嫁姑の関係に代表される人間関係上のトラブルを避けるため、そもそも都心部では地価が高く、家も高く3世代が満足して一緒に住むことのできる家を手に入れることが難しいなど、様々な日本特有の理由が考えられます。

 それに対して、概して、中国では祖父母世代の影響が非常に大きいようです。北京大生との議論の中では、ジェンダーの話題から少し外れるものも含め、3つの事例が紹介されました。
 まず一つ目は、祖父母の育児参加です。中国では多くの場合、祖父母世代は自分たちの孫を育てたくてたまらないようです。孫が生まれると父母の住むところに地方から引っ越すことも日本ほど珍しくなく、積極的に育児参加する傾向にあるそうです。北京大側のメンバーの中にも、自分が産まれたタイミングで祖父母が地方からはるばる引っ越してきたという子がいました。これには、一人っ子政策(現在は二人っ子政策になったそうですが)によって孫がたった一人であるということが大きく関係しているのではないかという議論になりました。そして、この積極的な育児参加が、中国では専業主婦の割合が日本よりも低く、日本特有の出産時の離職やいわゆるM字カーブが見られない大きな理由ではないかと考えられます。
 2つ目は結婚相手に求める条件です。多くの場合中国では、親たちは自分の子供の結婚に際して相手方の家族の社会的地位を非常に気にするそうです。日本ではあまり見られない傾向であり、自分たちの孫の子育てに関わってくるからこそ、相手方の親を気にするのでしょう。
 3つ目は出産です。中国の地方部では、自然分娩でないと子供が賢く元気に育たない、出産時には麻酔を使ったり帝王切開をするべきではないという考えが依然根強く残っているそうです。そのため、出産時に地方に住む夫の方の両親が妻に自然分娩を強要することが多くあり、問題となっています。北京セッションのすぐ後に報道された、これに関するニュースを北京大生が紹介してくれました。妊娠中の女性の自殺に関するニュースです。妊娠中のあまりの痛さに麻酔をしようとしたところ、夫の両親から許しを得ることができなかった一人の女性。痛みに耐えかねた末、身を投げることを選んでしまったという悲惨な結末でした。今回の北京大側の参加者も、夫の両親との関係や出産についてとても心配していました。夫の両親が子育てをしてくれる分、妻も主張しづらいという理由が背後にあるようです。
これらの家族に関する議論の後に、教育、キャリア、家族の各内容を振り返りながら、最終プレゼンを作成していきました。

さて、上述した、祖父母の家族における位置づけは日中間の違いが明白に表れているトピックでした。京論壇では、このような日中間の違いについて、表層的な違いだけでなく、その背景にある文化、社会規範、システムなどを個人レベルでの経験と社会レベルでの要因を行き来しながら、深く掘り下げて話し合うことができました。そして、北京大側の参加者の持つ考え方を知ることが出来ただけでなく、自分たちの考え方や文化がどのように形成されているのかを見直す機会ともなりました。

その一方、僕個人として反省も多くあります。北京大・東大の両メンバーと過ごした2週間を通して、自分自身の能力不足、視野の狭さ、不十分な知識量に気づくこととなりました。上級生に囲まれながら、2年生という早いうちに自分の今の限界に気づくことが出来たという点では良かったのかもしれません。京論壇メンバーとしての半年間は学生生活の中でも、自分の中で大きく意味を持つ活動となりました。京論壇での多くの学びを忘れることなく、新たな一歩を踏み出していきたいと思います。
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教養学部2年 大島航