京論壇2017公式ブログ

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東京セッション報告①

こんにちは。グローバリズム分科会所属の土屋晴香です。
東京セッションでのグローバリズム分科会の活動報告をさせていただきます。
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東京セッションにおいて私たちは「愛国心」をキーワードに議論を進めました。その中でも今回の報告では、日本の反中感情に関する議論に焦点を当てたいと思います。

反日/中感情に関する議論を始めてまず気づいたのは、東京側と北京側のこれらの感情との関わり方の違いです。東大生は反中感情を自分とは遠いものとして距離をとる一方、北京大生は反日感情を自分と直接関わりのある問題として語っていました。
また東京サイドは、反日感情の危険さや共通の敵として国家を団結させる役割を指摘し、それに対し北京サイドは反日感情の根底にあるものとして南京大虐殺等の歴史上の日本の過ちを強調しました。

これらの敵対的な感情を理解するために、まず日中両国における愛国心の三つの違いに言及する必要があります。
一つ目は愛する対象です。東大生は文化や経済的なプレゼンスや衛生、北京大生は中国の長く偉大な歴史、その中でも特に20世紀の屈辱から急速な発展を遂げた復興を、自国を誇らしく思う理由としてあげました。
この時に北京大生がホワイトボードに年表を書き、屈辱からの復活というストーリーを熱く語ってくれたことは印象深く、同じく戦後急激な発展を遂げた日本のストーリーに関する比較的冷めた東大生の視点との違いには驚かされました。

二つ目は愛国心の背景にある社会状況の違いです。
先進国かつかなり均質な社会である日本において、国を団結させる強い動機や必要性は生まれにくい一方、発展の途上にあり、また国内に多様な民族や文化、宗教を抱え込む中国には、当然イデオロギーによる団結を通じて正当性を確保する強い要請があります。
事実、北京セッションと東京セッションを通じ、人権や政治体制など様々な議論において北京側はこの「legitimacy」を強調していました。広大かつ多様な文化を内包する中国という国をまとめ上げ統治することは当然日本とは比較にならないほど困難であり、そのためには多少の抑圧も看過せざるを得ない場合もあるという意見は、非常に説得力がありました。

最後に指摘すべきことは、中国の愛国心に比べ日本の愛国心は条件的であるということです。日本の愛国心は多くの場合、衛生やマナーなどの条件が満たされた時のみに生じる条件付きである一方、中国の愛国心は歴史を主な源としているためより絶対的かつ継続的だと考えられます。

では、これらの違いをふまえると反中感情の背景や原因には何があるのでしょうか?

まず最も重要な反中感情の特徴として受動的であるということが挙げられます。これは東大側が、反中感情の主要な原因の一つは「中国人が日本のことを嫌っているらしいから、私たちも嫌う」であると分析したことに基づいています。

そして反中感情には先ほども述べた日本社会の特性も非常に密接に関連しています。先ほども述べた通り日本は民族的にも言語的にも極めて多様性の小さい国であり、私たちはしばしばその均質性がもたらす住み心地の良さを享受しています。しかし異なる文化背景を持つ外国人が多く来日し、日本の習慣や規範に従わない場合これらの心地よさは失われてしまいます。それゆえ日本においては規範やマナーを守ることが非常に重視され、その規範を共有していない人々に対し反発を覚えることがしばしば起こります。

さらに、多くのメディアが中国を未成熟なマナーの悪い国として見下すような報道をしていること、日本はアジアの中で最も発展した国であるという思い等も反中感情を形作る要素として忘れるわけにはいきません。

今回の報告が「反中感情」を中心に据えていることからも明らかなように、京論壇の活動は私にとって、中国についてはもちろんの事、日本についてもより深く考える契機となりました。
京論壇の活動を一年間支えてくださった皆様、本当にありがとうございました。

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教養学部2年 土屋晴香