京論壇2017公式ブログ

京論壇2017の公式ブログです。ゆるふわに記述することを心がけます。

北京セッション報告⑥

こんにちは、エリート主義分科会の川村です。
今回は北京セッションでのエリート主義分科会の議論の内容を中心に報告していきたいと思います。

具体的な議論の内容については前の記事で長谷川くんがまとめてくれているので、今回は大枠の部分をまとめていきます。

結論として大きくまとめると、北京セッションでのエリートについての議論を通して、
・東大生、北京大生の間で一定の公共性(社会に対して貢献しよう、したいという意識)が共有されているということ
・ただし、エリートという語に対するイメージが異なっていることからエリートという語を使ってまとめると話がかみ合いづらいということ
・エリートという語の曖昧さゆえに議論の途中でエリートという語の扱われ方が変化したり個々人のエリート観が変容したりしていくなどすること
といったことが分かりました。
その上で、分科会として「エリート」についてのみにとどまらず、「エリート主義」という問題についてももう少し向き合っていく必要性が感じられました。

具体的にどういった形で議論を進めていたかというと、「エリートの社会における理想的な役割」を明らかにするということを大きな目的として、立法・行政といった基本的な政治制度について相互に確認した後、東大生も北京大生もいわゆる高学歴に当たるということから、政治・経済と教育の間の関係を確認するために政治家や官僚の学歴といった教育と政治の関係についての情報と北京大と東大の学生の出身高校や地域、世帯収入といった経済と教育の関係についての情報を交換し、そして「エリートとは何か?」という問いに対する個人の価値観ベースの議論を行うことにしました。

北京セッションにおいて、「エリート主義」というよりも「エリート」についての問いが中心となった背景には、
・北京大生の中で日中の間でのエリート観形成における変遷が知りたいという意見が上がったこ
・東大生側としては北京大生との間で「私たち」といった共通概念を形成できるのかどうか確認するという点で中心概念であるエリートにおける異同を確認したかったということ
があげられます。
この問いについて議論した結果、前の記事でもあったように東大生・北京大生の間での個々人の価値観の差異や共通点といったものを知ることができました。また、この議論を通して、必ずしも「エリートとして」という要素に裏付けられているわけではないけれども、範囲に差はあれ「社会に対して自己の能力でできることをしていきたい」といった考え方が東大生・北京大生両者の間に広くみられることもわかりました。

一方、議論の後半において、「エリートについての問いを最初に持ってきたことによりエリート主義自体についての批判的検討が行われないまま進んでしまったのではないか」という課題が見つかりました。また、その時点でエリート主義に対する双方の考え方を共有してみたところ、双方のエリート観の違いを反映してかエリート主義の対象となるスケール感の違いといったものが明らかになりました。具体的には、北京大生サイドとしてはエリート主義を「権力の独占と限定的な人たちによる権力者の再生産」という比較的狭い意味でとらえ、東大生サイドは「エリートに付随する振る舞い」という広い意味で考えていました。

議論の後半に至るまで「エリート主義」自体が取り上げられなかった原因としては、「エリート」という語を使うか使わないかの差はありながらも、エリート主義的な感覚が東大生・北京大生の間で共有されていたからではないかと考えています。日本における「エリート」という語のイメージが、中国におけるそれよりは悪くないということもあり、東大生側としては「エリート」という語がより身近なところで使われています。その中で、少なからずエリート的なものとしての感覚が内面化され、エリート主義を受け入れた上での議論が展開されていることに対して違和感を感じなくなっていたのではないでしょうか。また、北京大生側にしても、自身が「エリート」であるとは考えないながらも一般市民との間には隔たりがあると感じていたのは確かであり、そのため狭い意味での「エリート」の周囲に位置する彼ら自身が取るべき行動というところで東大生側が考えていた「役割」というものと親和性があったのではないかと思います。

以上の北京セッションでの議論の進行を踏まえて、東京セッションではエリート主義についても議論を深めていきたいと思っています。
気づけば東京セッションが始まるまで1週間を切りました。最後の最後まで議論を深めるべく頑張っていくので、10月8日の報告会にも是非是非お越しください。
f:id:jingforum2017:20170927194442j:image

教養学部4 年川村駿太