京論壇2017公式ブログ

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【コラム】東大を卒業したらエリートになれるのか?

今年の春、友人と会うためにシンガポールに1週間ほど滞在していた。展覧会を見るのが大好きな私は、日常生活の中だけではなく旅行する度に、現地の博物館や美術館へ行く。シンガポールに行っていた時も、友人に現地で話題になっている展覧会は何かを聞き、一緒にナショナル・ギャラリー・シンガポールに行った。外国人であっても学生証があれば学割を受けることができると言われ、学生証を見せたらこのように言われた。
“Are you attending University of Tokyo? It’s honor to have you, a young elite in our Gallery.”

当時は、この褒め言葉にサンキューと気軽に言ったが、展覧会を見つつある疑問が私の中に浮かんできた。なぜ彼は私のことを若いエリートだと言ったのであろう。彼と私は5分にも満たないほどの短い間話しただけであるが、いったい何を根拠としてそういったのであろうか。彼が私をエリートと表現した根拠は一つだけしかないことが予想できるだろう。東大生という学歴。

 考えてみると、エリートであると言われたのは初めてではない。高校に通っていた時もよくこのような褒め言葉を耳にしていた。自慢話になってしまうが、私の出身校は母国の韓国でトップ校と言われるところの一つであり、その当時も出身校がここですと話すと、周りの人々によく「これから立派なエリートになれ、エリートであるからもっと頑張らなきゃ」などと言われた。

このような私の経験から推し量ってみると、少なくとも学歴はエリートになる前提の一つであることが分かるだろう。確かによくエリートだと謳われる人々を考えてみると高学歴のものが多い。アメリカの歴代大統領の学歴を見てみると、最も多くの大統領が卒業した大学はハーバード大学で(8名)、その次はエール大学であり(4名)、まさに高学歴であると言える。イギリスの場合も歴代首相を含め多くの政治家の出身大学はオクスブリッジ(オクスフォード大学ケンブリッジ大学)であり、出身校もイートン・カレッジを卒業したものが圧倒的に多かった。

また、上記のような政治的な意味としてのエリートだけでなく、ビル・ゲイツウォーレン・バフェットなど技術、経済などをリードした様々な面でのエリートも考察に入れてみよう。ビル・ゲイツハーバード大学ウォーレン・バフェットペンシルベニア大学出身であり、彼らもやはりその多くは高学歴であった。

だとしたら、トップ大学を卒業したこと=エリートと言えるのであろうか。また、トップ大学とは、このようなエリートの多くを生み出したため「トップ」であると言われ始めたのか?

ここで、エリートの語源について話したい。エリートとは、「選ばれたもの」「影響力を持つもの」「中核」などの意味を持つフランス語であり、社会の中で優秀な能力や影響力を持つ人間や集団を意味する。その語源に関しては複数の説が存在するが、最も有力なものはギリシャ神話に登場する死後の楽園「エリュシオン」に由来するという説である。「エリュシオン」は生前に正しい生き方をした人しか行くことのできない世界で、死んだ後に神がエリュシオンに行けるかを決める。まさにキリスト教の天国と同じようなものである。即ち、エリートはこのエリュシオンに行ける存在、神に選ばれた存在であるという概念から来たのである。

語源に基づき、エリートをただ単に「選ばれたもの」「選別されたもの」としてみると、皮肉なことに我々の社会には、ギリシャ神話と違って誰がエリートであると選んでくれる存在がいない。そのため、人々は受験という制度を借り、この制度で「選ばれた存在」をエリートとして捉えているのではないかという思いに至った。

しかし、だとしたら高学歴の人のすべてが果たしてエリートであると言えるのであろうか?正直なことを言うと、私自身は私のことを一度もエリートだと考えたことがない。このような私の思いは東大を卒業したら変わるのであろうか。私は大学卒業までに、エリートとしての素質を備えることができるのであろうか。それとも、実は学歴ではエリートであるかないかを測れないのではないだろうか。だとしたら、エリートの基準はなんであろうか。

これらの多くの疑問に決まった答えはないだろうが、これらについて考えていくことが、今年のエリート主義分科会の課題であると思う。一つの真理があるわけではないが、これらについての議論は我々の社会を理解するために役立つことは確かであろう。

ここで私は他の分科会にも、また、このコラムを読んでいるすべての方々にも聞いてみたい。

あなたはエリートですか?あなたが考えるエリートとはどのようなものですか?

 

教養学部2年 ソンジヒ